こんにちは、トキワ印刷です。
私たちが拠点を置く静岡県浜松市は、
2007年に周辺部の市町村を吸収合併する形で政令指定都市となり、
全国5位の規模を誇る大都市となりました。
浜松市の特徴の一つに、
面積の7割を占める天竜市を中心に豊かな自然が残されていることが挙げられます。
私は2010年に浜松市が行なった生物資源調査に参加して、
昆虫と菌類の分布状況を精査したことがあります。
子供の頃から甲虫類が大好きだったので、
この機会に「図鑑でしか見たことがなかった珍しい種が見つかったら」
という願いがありました。
天竜区の奥の奥、もう少しで長野県との県境というあたりで、
画像に示す虫を見つけることができました。

・種名:コブスジツノゴミムシダマシ
・学名:Boletoxenus bellicosus (Lewis)
写真を見ると随分いかめしい印象があり、
図鑑情報で体長は6mm内外と知ってはいたものの、
実物はとても可愛らしい印象を与える虫でした。
狙って採れる虫ではない、
つまり環境指標昆虫としても通用しそうな虫ですので、
観察・飼育・写真撮影・標本などを目的に多くの個体を得ることができて
とても嬉しく思ったものです。
この虫の特徴はとても「甲虫らしい」姿をしていることです。
背中には小さなコブが並んでいてゴツゴツした印象。
当然のことながら体表部は鎧のようでとても硬い。
オスには胸部から前に向かってまっすぐ伸びる長大なツノが1対ある。
恐竜でいうとトリケラトプスなどを連想します。
ところでカブトムシやクワガタムシなどツノや大顎を発達させた甲虫は、
特にオスが闘争的・好戦的です。
条件の良い餌場や住処を確保してメスがやってくるのを待ち、
その間は他の個体を徹底的に排除します。
これは短い成虫寿命の中で自分の遺伝子を効率的に残すための本能的な行動です。
しかしコブスジツノゴミムシダマシはこれだけ長大なツノを備えているのに、
長時間観察しても闘争行動は一切見られませんでした。
狭いスペースにオスを数頭入れてけしかけても、
争わないどころかそのうちにお互い寄り添って休憩している。
中にはひっくりがえって無防備な体制になり、
眠っているとしか思えないように長時間動かずにいる者もいるくらいの
平和愛好者たちでした。
ではどうしてこんなツノを発達させたのか、
という疑問が残ります。
コブスジツノゴミムシダマシは、
成虫・幼虫ともにサルノコシカケ科のキノコの子実体を食べます。
私が見つけたのはブナの大木の幹についた、
それこそ本物のサルが座って休憩できるほどに大きなサルノコシカケの
子実体の下側でした。
ついでにサルノコシカケも木から剥がして持ち帰り、
分解してみると中からたくさんの同種幼虫が出てきました。
とはいえこのような条件の良いサルノコシカケの子実体は、
自然環境が豊かに残された場所とはいえ「いくらでもある」
というわけでもありません。
ある時この虫の標本を作成して細部を観察していたら、
この長いツノの先端に橙色の飾り毛、
ちょうど毛糸のような質感の毛の束があることに気づきました。
このような毛束は闘争には全く無関係なはずです。
そこで想像を逞しくしてみたのですが、
もしかしたらこの虫はツノの先端の毛束にサルノコシカケの胞子を付着させ、
どこか都合の良い場所に運んでキノコを養殖しているのでは、と。
コブスジツノゴミムシダマシの成虫寿命はせいぜい半年程度です。
一方サルノコシカケの大型個体はそれこそ10年以上かかって成形されます。
もしこの想像が間違っていなければ、
彼らは壮大な食料政策を行なっていることになると言えるでしょう。
根拠に乏しい空想ですが、
あのような期間に使い道がないのであれば邪魔なでけですし、
進化の過程であのようなツノを発達させたのは、
なんらかの意味が絶対にあるはずなのです。
大自然の中でこのような小さな虫がそうした営みをしているのであれば、
ニッチとしても大変興味深い生態ということができます。
ニッチといえば「ニッチビジネス」などという言葉があるように、
どちらかというと事業者が探して参入する競合相手の少ないフィールドを意味します。
生き残り戦略としてあるテーマに特化して
企業なら存続・成長を目指す、
昆虫ならば遺伝子を残して繁栄する、
という具合にいずれも「多様性」をキーワードに考えると非常に興味深い営みです。
好きなことを書いていたらブログとしては長文になってしまいました。
以上、トキワ印刷でした。
トキワ印刷ホームページ
http://www.tokiwap.co.jp
私たちが拠点を置く静岡県浜松市は、
2007年に周辺部の市町村を吸収合併する形で政令指定都市となり、
全国5位の規模を誇る大都市となりました。
浜松市の特徴の一つに、
面積の7割を占める天竜市を中心に豊かな自然が残されていることが挙げられます。
私は2010年に浜松市が行なった生物資源調査に参加して、
昆虫と菌類の分布状況を精査したことがあります。
子供の頃から甲虫類が大好きだったので、
この機会に「図鑑でしか見たことがなかった珍しい種が見つかったら」
という願いがありました。
天竜区の奥の奥、もう少しで長野県との県境というあたりで、
画像に示す虫を見つけることができました。

・種名:コブスジツノゴミムシダマシ
・学名:Boletoxenus bellicosus (Lewis)
写真を見ると随分いかめしい印象があり、
図鑑情報で体長は6mm内外と知ってはいたものの、
実物はとても可愛らしい印象を与える虫でした。
狙って採れる虫ではない、
つまり環境指標昆虫としても通用しそうな虫ですので、
観察・飼育・写真撮影・標本などを目的に多くの個体を得ることができて
とても嬉しく思ったものです。
この虫の特徴はとても「甲虫らしい」姿をしていることです。
背中には小さなコブが並んでいてゴツゴツした印象。
当然のことながら体表部は鎧のようでとても硬い。
オスには胸部から前に向かってまっすぐ伸びる長大なツノが1対ある。
恐竜でいうとトリケラトプスなどを連想します。
ところでカブトムシやクワガタムシなどツノや大顎を発達させた甲虫は、
特にオスが闘争的・好戦的です。
条件の良い餌場や住処を確保してメスがやってくるのを待ち、
その間は他の個体を徹底的に排除します。
これは短い成虫寿命の中で自分の遺伝子を効率的に残すための本能的な行動です。
しかしコブスジツノゴミムシダマシはこれだけ長大なツノを備えているのに、
長時間観察しても闘争行動は一切見られませんでした。
狭いスペースにオスを数頭入れてけしかけても、
争わないどころかそのうちにお互い寄り添って休憩している。
中にはひっくりがえって無防備な体制になり、
眠っているとしか思えないように長時間動かずにいる者もいるくらいの
平和愛好者たちでした。
ではどうしてこんなツノを発達させたのか、
という疑問が残ります。
コブスジツノゴミムシダマシは、
成虫・幼虫ともにサルノコシカケ科のキノコの子実体を食べます。
私が見つけたのはブナの大木の幹についた、
それこそ本物のサルが座って休憩できるほどに大きなサルノコシカケの
子実体の下側でした。
ついでにサルノコシカケも木から剥がして持ち帰り、
分解してみると中からたくさんの同種幼虫が出てきました。
とはいえこのような条件の良いサルノコシカケの子実体は、
自然環境が豊かに残された場所とはいえ「いくらでもある」
というわけでもありません。
ある時この虫の標本を作成して細部を観察していたら、
この長いツノの先端に橙色の飾り毛、
ちょうど毛糸のような質感の毛の束があることに気づきました。
このような毛束は闘争には全く無関係なはずです。
そこで想像を逞しくしてみたのですが、
もしかしたらこの虫はツノの先端の毛束にサルノコシカケの胞子を付着させ、
どこか都合の良い場所に運んでキノコを養殖しているのでは、と。
コブスジツノゴミムシダマシの成虫寿命はせいぜい半年程度です。
一方サルノコシカケの大型個体はそれこそ10年以上かかって成形されます。
もしこの想像が間違っていなければ、
彼らは壮大な食料政策を行なっていることになると言えるでしょう。
根拠に乏しい空想ですが、
あのような期間に使い道がないのであれば邪魔なでけですし、
進化の過程であのようなツノを発達させたのは、
なんらかの意味が絶対にあるはずなのです。
大自然の中でこのような小さな虫がそうした営みをしているのであれば、
ニッチとしても大変興味深い生態ということができます。
ニッチといえば「ニッチビジネス」などという言葉があるように、
どちらかというと事業者が探して参入する競合相手の少ないフィールドを意味します。
生き残り戦略としてあるテーマに特化して
企業なら存続・成長を目指す、
昆虫ならば遺伝子を残して繁栄する、
という具合にいずれも「多様性」をキーワードに考えると非常に興味深い営みです。
好きなことを書いていたらブログとしては長文になってしまいました。
以上、トキワ印刷でした。
トキワ印刷ホームページ
http://www.tokiwap.co.jp